【要約】劣化するオッサン社会の処方箋|書評|山口周|1流を見抜けない3流の人間たち

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劣化するオッサン社会の処方箋に学べる事

時間がない人のためのサクッとまとめ

  • 組織のリーダーは経時的に劣化していく。
  • キャリアを優位に進めていくために、汎用性の高いスキルや知識などの人的資本と、信用や評判といった社会資本を厚くしていく必要がある。
  • 現代社会において年長者ほど能力が高いという傾向はなく、逆に若者の方が能力が高いので、色々とチャレンジしていくべきである。
  • 率先してチームを引っ張っていく支配型のリーダーシップよりも、チームのメンバーをサポートをしてイニシアチブ取らせるようなサーバントリーダーシップを取るべき世の中になっている。

もうちょっと知りたい人のためのTips

本書を理解するための専門用語

オッサンとは?

傍若無人な振る舞いをして自らを省みることのない人。
けっして高年齢の男性の蔑称として言っているわけではない。

パレート分布とは?

成果や富の8割は2割の人たちによって生み出されているという理論。80:20の法則ともいわれる。

特に印象的な内容劣化するオッサン社会の処方箋

学び1:組織のリーダーは構造的・宿命的に経時劣化する

まず大前提として、ある程度大きな組織には一流、二流、三流の三つのタイプがおり、基本的に能力も成果も正規分布ではなくパレート分布している。

パレート分布とは2割の人間が8割の成果を生み出しているという理論であるので、一流、二流、三流で考えると、組織には二流と三流が圧倒的に多いということになる。

企業の創業者は基本的には天才であり一流である。

そのため、基本的に人を見る目がある程度あるのだが、たまにエラーをしてしまうことがある。

つまり、二流の人間を後継者に指名してしまうのである。Sony Interactive Entertainment

二流の人間を指名してしまうと大変である。

二流の人間は一流の人間を見抜くことができない。凡人は天才を見抜くことができない。凡人は自分より高い水準にある人を理解することができないのである。

そのため、二流の人間が社会的な権力を手に入れると、周辺にいる一流の人間を抹殺し始める。

結局この流れにより、二流の後継者はお世辞や政治的にふるまうような二流が後継者になり、この流れがどんどん続き、組織の劣化は不可逆的に進行する。

つまり、基本的には世代が変わるごとにリーダーのクオリティは劣化するのである。

よほど意識的になって天才や才人を人選に担ぎださなければ、その組織の人材クオリティの平均は限りなく凡人の水準に近づく。
 
ただ、組織の自浄作用で一流のリーダーを返り咲かせることはむずかしい。一度全ての前提をひっくり返してガラガラポンをするしかないのである。

学び2:どこでも必要とされるようにモビリティを高める

モビリティとは、辞書では「移動性」という意味であり、キャリアにおいては、どのような場所でも生きていけるようなスキルを獲得することである。
いつでもどこかに行ける、いつでも自分の会社の外に出ていくことができる。
つまり、モビリティが高いとなる。
逆に、自分の会社だけで使えるようなドメイン知識のように、その文脈に依存度の高いスキルばかりを身に付けている場合は、モビリティが低いということになる。
 
モビリティを高めるには、汎用性の高いスキルや知識などの人的資本と、信用や評判といった社会資本を厚くしていく必要がある。
基本的には学び続けるしかない。
 
モビリティが高ければ、オピニオンとエグジットを行使できる。
オピニオンとは、上の人に自分の意見を言うことである。
また、エグジットとは、自分自身が上の人をだめだと思ったときにその元を去ることである。
これからの世の中はそれができることが大切。

学び3:キャリアは四つのステージで考える

基本的に、組織画大きくなるほど出世の確率は下がり、大企業に勤める人は、社長や役員にならない限り、40代後半でこれ以上の昇進がないと言われる。
これは遅すぎる。約20年働いて、あなたはセンスがないといわれるようなものである。
外資系やよく成果主義で成果を出せないと、数年などですぐにやめさせられるが、逆にセンスがないからやめて次の向いている仕事を探しなさいということを言われてると考えれば、日本企業よりも外資系の方がビジネスマンにやさしいといえる。
キャリアの早い段階で、仕事の向き不向きがはっきりするのは雇われている側にもとてもメリットがある。
上記のように40代中盤で、センスがないと言われたときに絶望しないように、人生を四つのステージで考えておくことが大切である。
 
第1ステージ:0歳から25歳
基礎学力や道徳など基礎的なスキルを身に付ける段階。
 
第2ステージ:25歳から50歳
いろんなことにチャレンジし、スキルや人脈、自分がわくわくするものをみつける段階。
 
第3ステージ:50歳から75歳
第1ステージや第2ステージで身に付けた能力を使って、世の中に実りを返す段階。
 
第4ステージ:75歳から100歳
余生を楽しむ段階。
 
今までは、人間の寿命的にこの四つのステージで考える必要がなかったが、現在人生100年時代と言われているように50歳は人生の折り返しステージであることを常に意識する必要がある。

学び4: 現代社会において年長者ほど能力が高いという傾向はない

基本的に経験を蓄積したからといって、判断力の向上するとは言えない。
実際に年長者ほど能力が高いという傾向はみられなかった。
むしろ、とある研究によると、パラダイムシフトを主導するのは多くの場合、非常に年齢が若い人か、その分野に入って日の浅い人なのである。
ではなぜ年長者イコール能力が高いという印象があるのか?
これはちょっと前までは、年長者=データベースという公式がなりたったからである。
おばあちゃんの知恵袋という言葉があるように、長く生きている分だけ、年長者の方が経験や知恵があり、問題を解決する上でとても重要な役割を太古の昔から担ってきた。
ただ、現在は少し違うのである。
 
それは下記の三つの理由から証明される。
1. 社会変化のスピード
社会の変化が速すぎて経験が価値を持たなくなっている。
 
2. 情報の普遍化
だれでも情報をインターネットやSNSで得ることができるようになっている。
 
3. 長く生きる人の増加
多くの人が長生きすることで、競合が増え、データベースとして価値がなくなってしまった。
 
また、問題解決には下記の三つのアプローチがある。
1. ランダム(直感)によるもの:アート
2. ヒューリスティック(経験則)によるもの:クラフト
3. オプティマル(論理)によるもの:サイエンス
 
大胆な直感や緻密な分析は全般に若い人の方が得意であるため、このうちランダムとオプティマルについては若者の方が優位がある。
 
また研究からも、上記は証明されており、主に受験に使うような能力である暗記力や計算力などをつかさどる流動性知能は20歳がピークだといわれており、新しいことを学習することや、新しい環境に適応するための問題解決能力などを表す結晶せい知能は60歳をピークにするといわれている。

学び5: 支配型リーダーからサーバントリーダーへ

支配型リーダーとサーバントリーダーとう考え方がある。
 
支配型リーダーは自分の経験に基づく有能さでチームを引っ張っていくリーダーシップ。ただ、比較的、傾聴力を持たないため、何を言ってもムダといった部下の士気の低下を招いてしまうことが多い。
 
一方で、サーバントリーダーは支援がメインである。部下がやりたいということをサポートするのみであまり介入しないリーダーシップのことである。イニシアチブをとった能動的な人たちが出てくることが多い。
 
サーバントリーダーシップを発揮するためには、時代に劣化しない結晶性知能を身につけることと、より深い問いかけをするための教養が必要となってくる。

その他の学び

  • 創造性に宗教が規定する行動様式が大きな影響を与えている。研究から、カトリック→儒教仏教→プロテスタントという順序で創造性の優劣があるといわれている。
  • 権力研究の第一人者であるジェフェリー・フェファーの「権力を握る人の法則」という本からは、出世した人は強欲で権力志向が強く、プライドを捨てて上司にオベッカを使ったからということが考察されている。
  • 権力は情報の独占の支配によってその生命を維持する。
  • 権力による弾圧が目に見えているとき、その権力はすでに末期状態にあると考えてよい。
  • 判断力には教養が必要であり、哲学を学ぶことがとても大切である。
  • パラレルキャリアで重要なのは、リスクとリターンの異なる仕事を組み合わせる
  • 経験の質が大切である。人がもっとも変化しやすいのは、新たな経験と自身がもつ既存の理論がぶつかるとき。だから、教育者としては、教育を受けるものに衝突が起こるような新たな経験を提供したり、対峙すべき新たな問いをたてたりすることが大切となってくる。
  • いろんな仕事を、いろんな人たちと、いろんなやり方をでやったという経験の多様性が、良質な体験をもたらし、学習を駆動することになる。
  • クリエイティブなシニアは挑戦し続けている。
  • セカンドステージでいろいろなことにチャレンジをして種をまいておく。あまり人生の早い段階で脚光を浴びるのも次のステージの種まきをしなくなる可能性が高くなるので考えものである。
  • 人材育成に関する70:20:10の公式がある。
    • 直接学習70:実際の生活経験や職業上の経験仕事上の課題と問題解決
    • 間接学習20:ロールモデルの観察と模倣(間接学習)
    • 研修10:研修などのフォーマルなトレーニング
  • 一定期間で仕事をリセットすることが重要である。分野とスキルのマトリックスで考える。基本は同じ業界×違うスキルのチャレンジを繰り返し、スキルの幅が広がってから、違う業界×同じスキルに移動する。
  • 失敗のダメージが少ない25歳から50歳のセカンドステージでたくさん失敗しておく。
  • 回遊による知の越境に本質がある。
  • 鍵は良質な仕事体験と社外での活動にある。
  • 何かを始めるのに遅すぎるということはない。

著者は元BCG戦略経営コンサルタントの山口周

山口 周(やまぐち しゅう、1970年[1] – )は、東京都生まれ[1]日本の独立研究者、著作家、パブリックスピーカーである。本人は「ナレッジキュレーター」と名乗ることもある。

「経営におけるアートとサイエンスのリバランス」「組織の潜在的創造性の開発」「資本主義とビジネスの未来」等を主な研究領域とする[要出典]コーンフェリーのシニアパートナーを務めながら、研究、経営大学院での教職、著作、各種ワークショップの実施、パブリックスピーキングなどに携わる。[要出典]学部と大学院で哲学・美術史を学んだという特殊な経歴を活かし「人文科学と経営科学の交差点」をテーマに活動を行っている

 

(Wikipedia)

 

山口周の著作の要約

【要約】仕事選びのアートとサイエンス|山口周(元BCG)|まとめ